寺沢武一『コブラ』に見る風水的感覚―― TARGET OUT ――

寺沢武一『コブラ』に見る風水的感覚

―― TARGET OUT ――

私が小学生の頃、
とても印象に残っているマンガがある。
寺沢武一先生の『コブラ』だ。

当時としては珍しく、
セクシーな美女が多く登場する
スペースオペラだったという印象も、確かに強かった。

だが、それ以上に記憶に残っているのは、
物語の展開そのものだった。

形勢が一気に逆転し、
こちらの予想が外れ、
「そう来たか」と思わされる場面が続く。

その流れが最後まで途切れずに描かれていたのが、
イレズミの女編だった。

今、読み返してみると、
あのイレズミの女編は、
かなり風水的な構造で描かれていたように思う。

運が良かったから助かった、
強かったから勝った、
といった話ではない。

場の条件が変わることで、
結果が変わっていく。

そんな描写が、
ごく自然に積み重ねられている。

レーザーが当たらない場面

イレズミの女編には、
今でもはっきり覚えている場面がある。

追い詰められ、
鉱山の通路に潜むコブラに向けて、
敵のスナイパーがレーザーライフルを放つ。

照準は合っている。
距離も問題ない。

それでも、
レーザーは命中しない。

理由は作中で、
はっきり示される。

鉱山内に設置された岩石溶解機。
その稼働による高熱で、
空気が淀み、
密度が不均一になっている。

撃っている側のスナイパーが、
こう理解する。

「ゆがんだ大気の中では、
レーザー光線は直進できない!」

ここで描かれているのは、
回避でも、幸運でも、
超人的な反応でもない。

レーザーは直進する。
ただしそれは、
直進できる条件が揃っている場合に限られる。

この場では、
その前提が崩れていた。

だから当たらない。

重要なのは、
コブラ自身が
何かを説明したり、
能力を誇示したりしないことだ。

ただ、
当たらない条件が成立している場
に立っているだけ。

結果は、
人の強さや精神力ではなく、
空間の状態によって決まっている。

子どもの頃は、
ただ「かっこいい場面」だと思って読んでいた。

だが今見ると、
あのレーザーが外れる描写は、
非常に冷静で、
現実的な構造をしている。

条件が変われば、
結果が変わる。

それを、
派手な説明もなく、
一つの場面で示してしまう。

さらに、
下水道の三差路で
三方向から火炎放射器による攻撃を受けた際も、
コブラは頭上のマンホール蓋を破壊し、
煙突現象を起こして熱を逃がす。

炎を消したのではない。
逃げ道を作っただけだ。

これもまた、
環境を利用した戦術だった。

だから今でも、
『コブラ』の中でも
イレズミの女編が、
妙にリアルに記憶に残っている。

あれは、
避けた話ではない。

当たらない場だった。

ただ、それだけの話だったのだ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です